健康心理学コラム:新しい町と認知地図

方位磁石_eyecatch

みなさんは、「認知地図」という心理学用語をご存知ですか?

認知地図というのは、トールマンという心理学者が提唱した概念で、頭の中で描いている位置情報とその関係性を言います。

例えば、あなたの自宅から最寄りの駅までの地図を、えんぴつで紙に描いてみるとしましょう。もちろん、インターネットを参照したり、地図帳を見ながらではなく、自分の記憶を頼りに、です。

 

交差点はいくつ通り過ぎますか?途中にコンビニはあるでしょうか。目印になるような大きな建物はあるでしょうか。自動販売機は、ポストは、交番はどうですか?

 

距離は同じでも、慣れると遠く感じなくなる不思議

もし、あなたが今すんでいる町に引っ越してきたばかりなら、その地図はとても簡素なものになるはずです。なんとなく、ここら辺は商店街…。なんとなく、この辺は住宅街…。

 

一つ一つの建物やランドマークの距離感も、実際とは異なるかもしれません。でも、生まれ育った町ならば、あるいは毎日通っている/いた学校や職場の周囲なら、内容はもっと充実し、距離感ももっと正確になるでしょう。

 

初めて通学路や通勤路が遠く感じられても、だんだん慣れてくると”遠さ”を感じにくくなっていくのです。

 

新しい場所で、なじめない・・・と感じたら

犬を連れて散歩_eyecatch

新しい場所になじむのが苦手だという方は、一度白い紙に「認知地図」を描いてみてはいかがでしょうか。そして、その空白部分を埋めるように、少し歩きまわってみるのです。

 

町中でなくてもよいのです。大学の構内でも会社のフロアでも構いません。朝少し早く家を出て散歩するつもりで、昼休みに自分の席の周りをぐるっと見回したりして。この方法なら、自分のペースで、誰に話しかけることもなく、簡単に始められるでしょう。

 

不思議なことに、認知地図の空白が埋まってくるころには、なじみのなかった場所が、見知った場所になっていることでしょう。 人間は、見慣れないものや知らないものに対して、どうしても不安になります。しかし、それがどこにあるのか、なんという名前なのか、それについて「知る」ことで、いくらか不安を和らげることができるのです。

※本コラムは、「さがメンター」育成プログラムの公式Faceboookページで過去に投稿されたものに、修正・加筆を加えたものです。